出資者による董事の派遣
出資社は基本的に派遣した董事を通じて、間接的にしか現地法人の運営ができません。董事は自分自身の考え方で、もしくは自分を派遣している出資者の考え方にしたがって董事会会議に出席し、企業経営の重要事項を討議決定します。出資者は、派遣する董事に会社の経営を白紙委任するわけで、それだけ派遣された各董事の権限は大きく、また、責任も重大です。出資者は董事の任命と更迭によってのみ、自ら出資した会社の経営を行うことが出来ます。しかしながら、董事の更迭は、出資者の意向に基づいて随時行うことができ、董事会の承認も合弁契約相手側の承認も必要としません。
董事会の構成員と任期
董事会の構成員は、董事長、副董事長、董事です。董事長、副董事長、董事は、出資者が出資した会社の経営を行うために派遣する現地会社の経営者であり、一括して「董事」と呼びます。「外資企業法」においては、董事会の設置、構成人数、任期についての規定はありませんが、企業設立の際の工商行政管理局への登記時には、董事会名簿の提出が求められますので、人数は決めなければなりません。中外合弁企業法実施細則では、董事会の構成人数は3人以上で、任期は4年と規定されていますので、独資企業の場合、任期は2〜4年、人数は3人以上と考えるのが妥当です。
最も一般的なのは、例えば中国企業と合弁した合弁会社の場合、中国側の出資会社総経理が董事長、日本側の出資会社の社長或いは役員クラスが副董事長、残る普通の董事においても中国側は副総経理、日本側は事業部長や担当部長という構成です。また、現地合弁会社の正副総経理(総経理、副総経理)も董事となるケースも多いようです。独資企業の場合は、出資者がすべての董事を派遣しますので、やはり事業に関係の深い部門から選任するのが普通です。最近は、社外取締役に相当する、出資親会社以外の組織に所属する人を董事として任命することもあり、また、中小企業においては、現地法人の総経理、副総経理が董事を兼任するケースも多いのが現状です。
会社設立後の第一期第1回董事会
会社設立後に開く董事会を第一期第1回董事会と言います。これは、会社が企業活動を始めるための不可欠事項を決める大変重要な董事会であり、日本の株式会社で言えば「設立総会兼設立取締役会」に相当します。この会議を開くことによって、会社として正式に正副総経理(総経理、副総経理)を任命し、会社の経営方針や組織を決定して、設立会社が名実ともに企業活動を始めることになります。したがって第一期第1回董事会は営業許可証が公布(営業許可証の公布された日付が会社設立日です。)されるとすぐに開催しなければなりません。
◎第一期第1回董事会で決議すべき内容の概要は以下のとおりです。
(1) 企業と企業董事会成立の確認
(2) 成立までの経過報告
(3) 資本金振込み日程、開設銀行口座の確認
(4) 企業の基本事項の決定(基本経営方針、当面の達成すべき目標、総経理以下高級管理職員の人事任命)
(5) 企業諸規則の制定(董事会、労務、財務関連規則)
(6) 人材採用と高級管理職員、一般職員の給与決定
(7) 建設事務所の発足と建設関連事務所、スケジュールの決定
(8) その他必要事項
年度決算董事会
会社が営業年度を終了して決算が出た後には、必ず年度決算董事会を開催します。年度決算董事会は、例年2月または3月に開かれます。春は中国のあらゆる法人の董事会の季節となります。
3月といえば、新年度が既に始まっておりますので、会社としては早急に董事会を開催し、董事会の役目である前年度の決算案と、今年度の事業計画案を討議承認し、さらに未分配利益のある会社は、出資者への配当額を決議しなければなりません。とりわけ日系外資企業においては、日本側の出資元企業の多くが3月末に年度決算をするため、3月末までに決算と配当を確定してもらわなければ困るという事情もあり、2月〜3月に開催する企業が多いようです。
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